掟 -OKITE- ZEN
2019.05.01
都会的スタンダードを提案するPUBLIC TOKYO。PUBLIC TOKYOが目指すのは着るヒトを最大限に引き立てるモノづくり。 ジャンルを超えて様々なシーンで活躍する、注目すべき“ヒト”にフォーカスし、生き方や仕事に対する“掟(スタンダード)”を紐解く。 今回フォーカスするのは、パルクール(フリーランニング)の第一人者として世界を相手に活躍をするZEN氏。同氏にパルクールへの想い、今後の展望を伺った。
“自分がパフォーマンスするうえで、一番伝えたいことは「可能性」”
ーーーパルクールを始めたきっかけ、知ったきっかけは?。
中学三年生の時に、クラスメイトから海外の外国人のパルクール映像集を見せられたのが
きっかけです。当時の一番すごい映像がまとめられたものだったんですがすごい衝撃を受けたのを覚えています。
第一印象として人間ってこんな動きができるんだと、と同時に、自分も同じ人間なら可能性が秘められているんじゃないかと思いました。昨日まで知らなかった自分の可能性っていうのを、映像を見るまでわからなかったように、もしかしたら今の自分が知らないことがもっと、ほかにあるかもしれないと感じました。
ーーー友人に見せられるまでは存在すら知らなかった?。

存在ももちろん知らないし、派手なアクションとかはワイヤーとかCGだったりとかなんか、ファンタジーの中の世界のものだと思っていました。実際の人間がこんなアニメとか映画の主人公みたいなことできるんだっていうのがすごく衝撃で。で、ちょっとやってみようよ、みたいな。笑 そんなきっかけで始めました。

ーーーそれまでは何かされてたんですか? 例えばダンスとか
いやいやいや、いわゆる普通の男子中学生で、帰宅部でした。だからバク転とかもちろんできなかったし、運動は好きだったけど、友達と遊ぶレベルでした。中学三年生でどうしようかなーと思いながらも、何したいの?とか聞かれても、何したいんだろうね。みたいなで、毎日何のために遊んで、何のために寝るのかっていうのもわからなくて、日常の中に刺激が漫画やゲームしかないという生活を送っていました。
ーーーそんな中で動画を見て、始めたタイミングはいつですか?
動画を見た日の放課後かな?
見せてくれた友達がやろうよっていってそのまま放課後、帰りの公園で学校と自分の家の間にある公園で、簡単な柵を超えたりするやつとかをやってました。
もちろん最初は全然できなかったり、思ったより体動かないとかバランスが取れないっていうのがたくさんあって。で、日も暮れたし明日またやろうよって言って、次の日も、きづいたらもう遊ぶ感覚でした。新しいゲーム買ったみたいな。
その日から毎日やって日が暮れたら家帰って映像見て、明日何やろうかなって考えて、で、学校終わってすぐ行ってこれやって、みたいな毎日になりました。昨日できなかったことがちょっとこうやったらできるんだっていう発見があって、毎日その新しい自分を知れるっていう楽しみが活力になっていたんだと思います。
ーーーウェイトトレーニングなどはされるのですか?
今まではウエイトトレーニングとかほとんどしたことはありません。足りない筋肉は動きのなかでつけたいっていうのがあって。今はありがたいことにプロとして、やらせてもらってて、その中で毎日自分のトレーニングする時間っていうのを頂けているので、なるべく動きの中で足りない部分を鍛えています。自分でメニュー考えて今の自分にもっとも必要なものを反復練習して、という一番いい形でできているのかなと感じています。
ーーー何かを目指してやられていたんですか?
自分の始めた当時はプロや大会もなくただただ遊びの延長でした。動画を撮ってみて他の地域のパルクールを知っている人から「すごいですね」とか言われて嬉しいとか。
ーーーYouTubeとかにあげてたんですか?

その当時はYouTubeが盛り上げってきた時代と同じタイミングでしたね。
パルクールを始めた人達もその映像見て始めたって人が世界的にも自分の世代ではすごく多くて、同時多発的に世界中で映像をきっかけにいろんな人が始めてましたね。
みんな見よう見まねで、技を広げたりもっとすごいことできるようになったりとかして、それをまたYouTubeにながして、またそれをみた人が触発されてっていうサイクルが今ではかなり増えていますね。パルクール自体の名前の認知度も上がってきているのを実感しています。学校もありますしね。

ーーー学校あるんですか?
ヨーロッパには専門学校もありますね。まずあとはパルクールジムっていうスケートボードのスケートパークみたいな、ああいうのが施設として世界中にどんどんできてきて、日本でもここ数年で増えてきました。今まではストリートだけだったので。
スケボーと同じで、公共の場所でやることなんでその場所のルールに従いながらやらなければならないので、どうしても限界があります。
昔は認知度も低かったのですが、そこから比べるとここ10年ぐらいでいろんなことが変わってきてて大会なども盛り上がってきてますし、スポーツとしての一面も認められつつあるなと感じています。自分が始めた当時からは考えられないことですね。
ーーー危険なイメージが強いですが
よく言われるのですが、受身やバランスの取り方など、体をどう使うかを学ぶもので、人間の基本的な体のコントロールの部分が徐々に自分の能力が上がっていって挑戦していく感じなので危険とは感じていません。
僕の時代はそれこそいきなり飛び降りたりとかやってみるみたいな感じでしたけど、今はちゃんと体に負担がかからないような着地の仕方とか、一番効率的なテクニックがアップデートされています。
ーーー今までケガとかないんですか?

骨折とかはないですね。まあもちろんその細かい擦り傷とか、打ち身とか捻挫とかはありますけどね。大会だと普段よりも攻めるので痛めることもありますけど、自分のペースでやっていく分には基本的にはケガはしてこなかったです。
自分の力量を超えた挑戦はしないっていうのは決めています。シーン的にも自分ができないようなことをやってケガをするようなことはパルクールではないって言われてて、すごくストイックなカルチャーなんです。
わりと誤解されがちなのが高いところ飛んだりとか、一見危険そうなところ行ったりしてクレイジーな奴らだっていうイメージが強いんですけど実際シーンの中を見るとそんなことはなくて、自分のできる範囲をわかってやっているんです。
むしろその人よりもどうやったら安全にやれるかを知ってるからこそ挑戦できる。だからどちらかっていうとスリルを求めたチャレンジとは真逆で、自分たちがいかに安全にできるかっていうのを常にトレーニングの中で学んで、結果安全にできるから普通の人よりも、普通の人では考えられないようなことができるっていう、ほんと逆説的な感じです。

ーーー女性もいるんですか?
もちろん女性もいます。やる気があれば筋トレと同じ感覚です。
自分が今よりも、自分の体のことを知るとか、今より体が使えるようになるってこと自体がパルクールなんです。必ずしも回転をしなきゃいけないっていうわけではないし、必ず飛び降りなきゃいけないっていうわけでもなく、むしろちょっと壁をつかまってみるとか、バランスをとってみるとか、そういう細かいところパルクールとして成り立っています。
ーーー魅せ方次第って感じ?
そもそもパフォーマンスの文化ではなくトレーニングの文化なんです。
ーーー今後はパルクールでどうしていきたいっていうのありますか?
パルクールってカルチャーだと思うんですよ。
ムーブメントカルチャーだと自分は思っていて、文化です。どこまで行っても。
なのでスポーツ要素が今後どれだけ強まって競技として大きくなっていっても、あくまで文化なので、競技がすべてになってはいけないし、逆に文化が先行し過ぎてトレーニング的な一面がなくなってもよくない。すごくそのバランスっていうのは大事だなって思います。
今は、年齢的にもアスリートとしてやっていけるので大会をスポーツ的に盛り上げていくっていう今しかできなことをやっているつもりはあります。
ただ同時にやっぱり、こう10年後20年後を考えるとそれだけではなくてカルチャーを盛り上げていきたいという想いもあります。
ーーーそれこそドラマやライブなどで知った人とかも多いと思いますが、そう言った広め方もある?

いろんなことを自分がやっていくことで、それもありなんだ、これもありなんだっていう風に広げてあげたいっていうのがあるのと、そもそもパルクールの可能性っていうのを自分はすごく大きく見てるんですよ。これはスポーツに限ったことでもないし、パフォーマンスに限ったことでもないし、すごく独自のものがあるのでそういう意味ではもっと何に落としても面白いものなんだよっていうのを自分なりに広げて伝えていきたいなっていうのはあります。それはシーンの外にも中にも同じです。

ーーーZENさんきっかけで知った人はかなり多いと思います。
そういってもらえると今の活動してよかったなって思うし、パルクールを始めなくても「ZENくんみたいな生き方をしている人がいるっていうのを知って自分もこういうの挑戦しようと思いました」とかっていう話を聴くたびにすごくやっててよかったなって思います。
ーーー不可能を可能にできるっていうインスピレーションをZENさんから貰えるんですね。
そう、まさしく。自分が当時感じた「可能性」というキーワードを広めるのも活動を続ける上ではすごく大事にしてます。自分がパフォーマンスするうえで、一番伝えたいことは何かっていうとやっぱり「可能性」。それは伝えていきたいなと思います。
ーーー今回のコラボに関して商品に落とし込んだ部分とか、こだわりとかありますか?

毎日生きていく中で、服は欠かせない存在じゃないですか?
みんな必ず服を着て、毎日選んで出かけるっていううえで、朝出かけるときにイメージしてたその1日のプランと、もちろん少なからずは予定は変わるわけじゃないですか。だから変わっていく目的に対しても常にそれを邪魔をしない服を作りたいなって思いました。それはパルクールをしている自分のライフスタイルからも感じることで、朝起きて今日こんな1日だろうなって思って服選んでも、道中ですごくいいスポットがあってちょっと動いていこうよってなるかもしれません。ちょっとパルクール見せてよってなるかもしれないし、夜イベントに行くことになるかもしれないし、全然わからないじゃないですか。
なのでその変わるライフスタイルに臨機応変に対応できるよう今回のアイテムに落とし込ませてもらってます。

ーーーいろんなシチュエーションで着れる服みたいな
動きやすさはまずまちがいなくて。そこだけはやっぱり今回すごくこだわらせていただいたポイントです。例えば、このバスにのらないと間に合わないとか、電車いっちゃうからこの階段ダッシュであがろうとか、いろいろ緊急なことがあると思うんですけどやっぱりそういうときでも自分の目的にたいして服が邪魔する存在であってはならないと思うんです。そういう意味でも体の動きであったりとかストレスフリーの服であるっていうのは、一つパルクールのアスリートである自分が関わらせていただく上では一番重要なテーマでした。ある意味僕が、一番をそこを気にしてる人種だと思うんですよ。そういった形で関わらせていただくのであれば自分がの一番強くこだわっている部分、その観点からモノ作りをさせてもらえたら面白いのかなと思いました。
ーーーパルクール専用のウェアとかあるんですか?


パルクールのブランドはあります。パルクールのチームがTシャツとかから始めてパンツ出してジャケット出してとかっていう形のものです。ただ彼らも0ベースからスタートしてるので、洋服の知識とか日本の技術っていうもの、PUBLIC TOKYOさんがこれまで培ってきたような最先端の技術を使ってパルクール的な観点をおさえたものをアプローチして出していくと言うのは世界的にもほとんど聞いたことがない話ですね。

“3つの「掟(ルール)」”

けっこう難しいですね。笑 正直めっちゃあると思います。
その中でも絞るのであれば一つは「可能性は無限大」。これはパルクールから教わったこと。自分が教わったいちばん大きいことで実際にその掟に従い始めたことで自分は今想像してた以上の環境の変化があります。パルクールに出会う前はほんとに普通の中学生でその時では考えられない世界で今、生きさせてもらってると感じてます。そういう意味で、常に可能性っていうのは自分次第でそれを信じて突き進むことの大切さと、常に自分で限界をつくらないように心がけています。
ーーーあきらめないで挑戦するっていう。中学生の時、動画を見て俺にはできないって思ってたのは今はないっていうことですね?
そうですね。つまりそう言ったことがこの世に無限に広がてるって思うと、なんでもまずは飛び込んでみたり、一歩を踏み出すことが大事だなと思います。その世界を知ってみるっていう事を、大事にはしているかもしれないですね。
ーーー行動力も伴わないと難しいと思うのですが、そのあたりはどう考えていますか?
そうなんです。アメリカへも、動画のパルクールのチームにアポイントのメール出して返事来ないまま行ったんですよ。夏休みだったと言うのもありほんとに思いつきでしたね。
でも向こうへ行ったらメールが返ってきてて、ここに何時に来いみたいな返信きていて。で、行ったらすごい温かく迎えてくれた経験がありました。
その時もしかして自分が今の自分よりも変に賢かったら変に言い訳して行けなかったと思います。逆に何もしらなかったからこそ行けた部分もありますね。
ーーーすごいですね。



さっきの服選びにも共通すると思うんですけど、旅行で計画立てて行ってもたいてい帰ってきた時とその想像って絶対に違うじゃないですか。今想像できるものってあくまで自分の経験だけで想像しているものだから現実のものとは違うんですよ。
可能性を知った気にならないというのを大事するって言うのはパルクールからすごく教わったことだし、今回洋服におとしたテーマでありますね。


2つ目は「先読みし過ぎない」っていうか知った気にならないとうのは大切にしています。やっぱり知った被りをしてしまうとそこで終っちゃうからそれ以上伸びないと思うんです。
知らない事を恥と思わないというか、まずは受け入れるという事をすごい大事にしてますね。パルクールでもそれはすごく大事で今の自分がパーフェクトではないっていうのを大前提としてわかっていないと、その間違ったまま進むことはできないんですよ。
常に昨日の自分より成長していかなきゃいけなくて、そういう意味では自分の中の弱い自分を認めるのは大事で、素直さとか。だから知った気にならないと言うのは大切にしています。

ーーー最後の掟は?

「無駄を大事にする」と言う事ですかね。ここまでの話だとストイックな感じですけど。その常に変わる条件に対して自分が対応する事が求められるっていうのがこのパルクールの良さでもあるんです。
大会とかでも前もってコースと明かされたりしません。行ってみてどういうパフォーマンスするかっていう対応力も含めて、普段トレーニングできてるかっていう適応力っていうのをすごく求められるんですよ。これはパルクールの文化のポイントのひとつとですね。ストリート発祥の文化ならではの面白さだと思います。そのストリートのこう変わるものに対して対応していく、その形が、ある意味この服やパルクールにも通じるものがあるのかなと思いますね。
対応する事すらも楽しむっていう。自分が着方次第とかコーディネート次第とか、細かいそれぞれの着方とかでスタイル出して、変わりゆく条件の中でそれに適応してフィットしたスタイルにしていくっていう適応性を大事にする。あくまで自分が合わせていくっていう部分を大事にしています。

4つめも出てきました笑
「ひけらかさない」。僕らって常に自分の限界を超えてとか、新しいことしてって中では、ものすごく社会の中で。いわいる毎日ちょっとしたものがあれば、ここでパフォーマンスもできるし、すばやく移動することもできれば、派手な技もできるわけじゃないですか。
でもあくまで最終的な目的っていうのは、トレーニングにあるんですよ。自分が守りたい人とか愛しているものとかを守りたいときに使える体であり、そういう時に負けない精神を持つことだと思っています。
ーーー精神的なトレーニングもあるんですね

そうなんです。なぜいろんな場所でやるかっていうと、自分の精神を鍛えるっていう意味もあるんです。人に披露するためにやっているわけではなく、自分がより自分のことを知っていくためなんです。あくまでパフォーマンスっていうのはおまけなんですよ。プロセスが一番大切なんで個人的にはあまりスポーツをしてると思われたくないんです。
普通の少年のままでありたいって思うし超人には決してなりたくないんですよ。人間の一番運動神経のいい奴みたいな笑 オシャレ楽しんでいる同世代の友達たちと同じ感覚でいつもありたいし。競技をするときもモードを切り替えるんじゃなくてそのままで、自分として出たいっていう。その延長として出たいっていう思いが強いのですね。
だから今回のアイテムもそうですけど、日常のライフスタイルの中で着れることを想像して、デザイナーさんと1つ1つ話し合いながらこだわってつくってます。例えば、派手にしすぎなかったりとか。
ショーツとかもちょっとわがまま言って海に対応できるようにしてもらったりとか笑 だから僕としては普段っぽいものを大事にしていて競技に寄せ過ぎないっていう、あくまで普通でありたいっていう想いは常にあります。

photo by ediphotoeye
ーーーパルクールを仕事として捉えてはいないんですね。
ZEN氏コラボ商品一覧
もともと仕事にしたいって思ったことはなくて、広げるうえで、ほんとに自分の生活までありがたいことにできて、ありがたい言葉ももらえて、それに対して恩返ししていくとその恩が募っていくっていう。返しても返してもいいものをもらっちゃうから一生返し続けることになります。あくまでそういう自由な意見でカルチャーを生きた人間がいるっていうことが大事かなって思っています。この先いろんなことをやりたい子に夢をあたえられたらなと思ってます。
そしてこの記事をみてくらた新しい世代の子たちも「あ、それがOKなんだ」っていってリスペクトをもってカルチャーをひろげてくれたらなと、自分が教わったことを彼らなりのやりかたで次の世代もつないでいってくれたらと嬉しいなと思います。
ZEN氏コラボ商品一覧
ZEN -ゼン-
1993年5月13日生まれ 日本のパルクールパフォーマーとしての第一人者。 15歳の時、友人に見せてもらったパルクールの映像がきっかけでパルクールと出会い、以後国内、海外の大会にて数々の受賞歴を持つ。 instagram:@zen_pk_official
1993年5月13日生まれ 日本のパルクールパフォーマーとしての第一人者。 15歳の時、友人に見せてもらったパルクールの映像がきっかけでパルクールと出会い、以後国内、海外の大会にて数々の受賞歴を持つ。 instagram:@zen_pk_official