掟 -OKITE- 勝海 麻衣
2018.11.30
都会的スタンダードを提案するPUBLIC TOKYO。 PUBLIC TOKYOが目指すのは着るヒトを最大限に引き立てるモノづくり。ジャンルを超えて様々なシーンで活躍する、注目すべき“ヒト”にフォーカスし、生き方や仕事に対する“掟(スタンダード)”を紐解く。
今回は日本の伝統的カルチャーである銭湯に欠かせない、浴場の壁の富士山等のペンキ絵を描く、銭湯絵師の勝海麻衣さんをピックアップ。
銭湯絵師という職業を初めて耳にする方も多いかと思うが、実は日本には現在3名しかいないという、貴重な伝統の担い手である。勝海さんは現役最高齢の絵師・丸山清人さん(82)の下で修行に励む傍ら、モデル業も勤める、まさに才色兼備の彼女は、銭湯ファン界隈では非常に話題となっている。そんな彼女の仕事に対する<掟>を探る。

“「こんなに自由な場所で、思い切り絵が描けたら楽しいだろうな」がきっかけ”
ーーー銭湯絵との出会いを教えてください。
勝海(以下・勝)「銭湯絵との出会いは小学校2年生の時、伊豆の銭湯で。その絵を見たとき、『こんなに自由に描ける場所があるんだ』と、衝撃を受けて。元々絵を描くことは好きだったんですけど、もしこういう所で思い切り絵が描けたら楽しいだろうな、というのが銭湯絵に対する最初の印象。でも、その頃は銭湯絵師という職業があるということも知らなくて。画家の方が描いていると思っていました。今思い返したら、そこの銭湯も、絵師さんでなくて、ご主人が描いていたのかも」
ーーー銭湯絵師と言う職業の存在はいつ頃知りましたか?

「中学生の時。当時画家になりたくて、調べていたら、銭湯のあの絵は銭湯絵師が描いていると知りました」

ーーー師匠でもある丸山さんとの出会いは何がきっかけで?
丸山(以下・丸)「実は、私達は出会ってまだ1年ほどなんです」
勝「初めてお会いしたのが丸山さんの個展。そこで一日ライブペインティングのイベントをしていて、その時に初めてご挨拶をさせて頂きました。そのときに、もちろん弟子入りは考えていましたが、自分から弟子入りしようと言うのはあまりにもおこがましいと思って。お人柄的に、私が『弟子入りさせてください』と頼んだら、いいよって言ってくださるのではないかと。でもそれはたぶん本意じゃない、だったら、丸山さんから弟子にならないかと言われるまで待ってみようと考えました」
ーーー普通にしていたら、弟子入りには繋がらなさそうですが・・・弟子入りに持ち込むために、どの様なアクションをしましたか?


勝「丸山さんは『見て覚えて』という方。現場に同行して、ひたすら仕事を覚えることに専念しました」
丸「私自身、お弟子さんを取ったことはなくて。知人の紹介もあり、勝海さんと出会いました。会ってみたら、想像以上に熱心で、驚いた。気が利くし、教えてやろうって気も起きて。ムサビ(武蔵野美術大学)卒で絵の基礎もできているし、舞台の背景も描いた事があると言うし。じゃあいいだろうと」
勝「とにかく見て学ぶことを大切にしています。大学で学んできたこととか、一旦置いてゼロから始めようみたいな気持ちで。正直現場も限られていますし、色作りやタッチは現場で学べることを最大限吸収する様にしています」


“よく見るということ”
勝「修行をしている中で、大事にしているのは、やっぱり“よく見る”ということ。あとは、わざと形から入るようにしています。服装とか、できるだけ丸山さんに近づけてみています。技術面に関しても然り。正直、最初は、銭湯絵師になるという意思があって、ただ技術を学びたいと思って弟子入りをしたんです。ただ、お会いしてからは丸山さんのお人柄や仕事に対する姿勢、すべてを学びたいと思う様になりました」
ーーー実際に弟子入りしてから、銭湯絵を描く難しさを感じることはありますか?






極 クルーネックプルオーバー ¥8,640税込 (MENS)
極 ポンデスウェット ¥8,640税込 (WOMENS)
勝「学生時代に、舞台背景を描いていた経験があったので、正直もう少し描けると思っていました。だけど、実際やってみると全然違って。グラデーションの技術だとか、5色という、制限された色で描くという伝統があって。そういった制限、制約の中で描くのは、自分の中で難しいと思う部分でもあるけど、その分学びは多いです」


“『型を覚えてからこそ、型破りがある』。自分の好きな絵を描くために、基礎基本が一番重要”
勝「もう一つは、挨拶。
大きな声で、はっきりと挨拶やお礼を言う。礼儀を大事に。これは自分の中で常に意識しています。まずは基礎が重要。師匠を見ているとやっぱり、基礎基本が完璧だと思って。例えば、現場や仕事道具の整理整頓だったり。仕事道具の入ったトランクを見ても、それぞれの場所がきちんと定まっていてとてもきれいだなと」
丸「別に意識してきれいにしている訳ではないんだけどね。本当に生活のごく自然の流れとして、整理整頓はしています。モノづくりの人って、皆道具を大事にしますからね」
勝「好きな言葉があって。歌舞伎の『型を覚えてからこそ、型破りがある』という言葉。基礎を学んで、習得しておかないと、自分が描く絵も説得力が乏しいものになってしまうんじゃないかと。銭湯絵の文化をきちんと学んだ上で、ようやく自分が好きな様に、自由に描くことが許されるのではないかと思っています。」


“フットワーク”
勝「最後は、フットワークを軽く、丸山さんの隣ですぐ動ける体制を常に整えていること。指示を出されたときにすぐ動けるように。その為には、丸山さんの考えていることが常にわかっていないと。現場から帰ったら、メモをみて復習は欠かしません。どのタイミングでどんな風に動いていたのかを見直します。基本的に、今のお仕事は師匠のサポートをすること。最善の環境で丸山さんが絵を描ける様に尽力しています」

ーーー勝海さんの最終的な目標と、今後の展望を教えてください。

PUBLIC TOKYOのアイテムについて
―――勝「銭湯絵師の仕事は体力仕事。師匠のサポートや指示に迅速に対応する為にも、動きやすい服装は必須です。その点、ラフに動けるスウェットはあったら嬉しいアイテムだと思って選びました。丸山さんともおそろいで、形からでも一人前の銭湯絵師に近づけるように」
勝「今、丸山さんという、非常に優れた師匠に恵まれて、学ばせていただいているのですが、いずれは自分ならではの富士山が描けるようになればと思っています。それが描ける様になるには、技術的にはもちろんですが、大前提として、人としての豊かさとか、魅力が大事なんじゃないかな、と思っています。正直、銭湯絵だけでこれから食べていけるのかという不安はあります。ただ、銭湯がこれからどうなっていくのかは私には分からないし、ものすごく速いスピード感で動いている世の中だから、到底計り知れない。だけど、自分でできることは全力でやっていこう、と決めました」

PUBLIC TOKYOのアイテムについて
―――勝「銭湯絵師の仕事は体力仕事。師匠のサポートや指示に迅速に対応する為にも、動きやすい服装は必須です。その点、ラフに動けるスウェットはあったら嬉しいアイテムだと思って選びました。丸山さんともおそろいで、形からでも一人前の銭湯絵師に近づけるように」

極 クルーネックプルオーバー ¥8,640税込 (MENS)
極 ポンデスウェット ¥8,640税込 (WOMENS)
勝海 麻衣―かつみ まい―
1994年生まれ。銭湯絵師。 武蔵野美術大学卒業後、東京藝術大学修士課程進学。 銭湯絵師・丸山清人氏の下で修行をする傍ら、モデルとしての活動も行なう。 モデルとしてはCMやミュージックビデオなどの作品に参加。 その活動の幅の広さや優れたルックスから、多くの銭湯ファンの間で話題となっている。 instagram:@katsumi0411
1994年生まれ。銭湯絵師。 武蔵野美術大学卒業後、東京藝術大学修士課程進学。 銭湯絵師・丸山清人氏の下で修行をする傍ら、モデルとしての活動も行なう。 モデルとしてはCMやミュージックビデオなどの作品に参加。 その活動の幅の広さや優れたルックスから、多くの銭湯ファンの間で話題となっている。 instagram:@katsumi0411